長期的に美しい状態を保つためのこだわり抜いた審美歯科


美しい天然の歯のような見た目の被せ物で歯を綺麗にしたいと考えている患者さんのニーズが非常に多くなってきました。

では美しい天然歯のような被せ物はどのような治療を行えば可能となるのでしょうか。どこの歯科医院でも自費治療で治療を行えば美しい歯になれると考えている方が非常に多いように感じますが、私の臨床経験上、美しい被せ物を長期間に渡って美しいままに安定させることは非常に難しい事です。
セラミック治療をしたとして、どうも形がしっくり来なかったり、色が合っていなく感じる。もしくは入った当初は美しく見えますが、時間の経過とともに下がってくる歯茎、被せ物を装着してから歯茎から出血しやすい、食渣が挟まりやすい等、様々なトラブルが患者さん自身が気付くレベル、もしくはプロにしか気づかないレベルで起こってしまう事が多々あります。

長期に安定感がある見た目も美しい審美治療を行う事は歯科治療の中でもかなりハードルが高い治療です。ここでは審美歯科治療を成功に導くための様々な要素について解説していきます。

審美歯科に徹底した歯周病治療が必要な理由


歯周病の治療をしっかりと行わずに被せ物をしてしまうと

・精密な治療ができず、虫歯や更なる歯周病の原因となる
・被せ物をした後に歯茎が下がってしまう(歯肉退縮)
・歯間乳頭(歯と歯の間の部分の歯茎)の消失による審美障害の出現

といったトラブルが時間経過と共に起こります。
歯周病の治療を行い、健康で美しい歯茎となった状態で初めて良い被せ物の型取りを行う事ができます。

このように歯肉の腫れた状態で良い被せ物を製作する事は不可能です

歯茎の炎症がない状態まで歯周病の治療を行う必要があります。

変遷する歯周病治療のコンセプト


歯周病が進行すると歯槽骨と呼ばれる歯を支えている骨が吸収し、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎の間にある溝が深くなってしまいます。

この歯周ポケットは深くなればなるほど細菌が繁殖しやすくなるため、歯周ポケットを浅くする事が歯周病治療の基本です。

少し前までは、歯周ポケットを浅くするためには徹底した歯石の除去と感染した根の表層のセメント質の除去が必要だと考えられてきました。

しかし、近年、様々な論文でセメント質を除去しなくても表層のみ軽く掃除をするだけで歯茎の炎症を引き起こしている成分を除去できる事がわかって参りました。

更に、過去の歯周病治療では歯周ポケットを浅くするために歯茎を退縮させることが必要だと考えられており、今現在もそれを行う必要があるケースもございますが、可能な限り歯茎を退縮させずに、上皮性の付着という歯茎と根の表面のセメント質が付着する事により歯周ポケットを改善するという考え方が広まっております。

このコンセプトはいかに歯茎を下げずに炎症を除去できるかを重要視しており、歯周病治療後の歯肉退縮が最小限となる事で後に被せ物をする際に見た目よく被せ物をする事を可能にしました。

また、従来は歯周外科と呼ばれる小手術を極力行わずに治療を行う事が多かったのですが、セメント質の温存を考えた時に深い歯周ポケットがあるケースでは無理に深部の歯石除去をおこなわず、歯周外科を行いセメント質を傷つけつ事でなく歯石除去を行う事で、歯茎の審美性を保つことができるため(スキャロップとよばれる美しい歯茎のライン、歯と歯の間の歯間乳頭と呼ばれる部分の保存)、PPTテクニックと呼ばれる歯茎を保存しながら手術を行うテクニックを併用した歯周病の手術を行うケースが増えております。

この歯周病の手術はフラップ手術と呼ばれ、かなり昔から存在する手術ではありますが、歯茎をめくって直接歯の根を露出させ感染原を取り除くという大まかなコンセプトは変わっていないものの、細かい術式はより非侵襲的なものに年々変化しております。

NSデンタルオフィスの歯周病治療

歯周病とは(厚生労働省サイト)

歯周病のコンセプトについてまとめ

従来の歯周病治療のコンセプトは歯周ポケットを浅くするために歯茎を下げる事を目的としていた。(現在もこのような治療を行うべきケースも多々存在します)

・現在の歯周病治療はできる限り侵襲を最小とし、歯茎を退縮させ歯周ポケットを浅くするのではなく、根に再付着させることで歯周ポケットを浅くしたいと考えるようになった。

・歯茎を根に付着させる(上皮性の付着)ためには、以前のような根のセメント質の滑沢化を行わず、表層の汚れを落とし、根の表層のセメント質という層を極力保存する必要がある。

・セメント質を温存しながら歯石や感染原を除去するために深い歯周ポケットが存在する場合は無理に非外科的に掃除をするのではなく、上部の取れる歯石を非外科的に除去した後に、フラップ手術を行いポケット深部の歯石を除去する事が増えた。

プロ目線の良い被せ物とは


良い被せ物治療の条件

①見た目が自然であり、天然歯と見間違えるような色合い

②被せた後に歯茎の炎症が起こらず歯周病が進行しない被せ物

③数年経過後も簡単に歯茎が下がらない事

下の写真のように歯茎が下がりブラックマージンと呼ばれる状態でお悩みの方も多いのではないでしょうか。

↑歯肉退縮してしまった被せ物。
このように時間経過と共に審美的トラブルを抱えるケースが良く見受けられる。

当院で行ったセラミック治療。左はセラミック治療前、右はセラミック治療後。当院で行ったセラミック治療の一つ前の歯は歯肉と被せ物の境目がブラックマージンとなり審美障害が起こっている。当院で装着したセラミックと比較すると非常にわかりやすい。

①見た目が自然であり、天然歯と見間違えるような色合いに関して

歯科医院のホームページを見ると、被せ物に様々な種類がある事がわかります。当院では殆どが金属を使用しない被せ物を行っており(理由は後で記述します)、大きく分けて2種類のセラミック系の被せ物をチョイスしております。

一つ目はLDSを主成分とした高強度ガラスセラミックスと呼ばれるもの、
二つ目はジルコニアと呼ばれるセラミックスです。

更にこの中に細かい違いがあり、科学的に全く組成の異なる素材であるため、接着様式や光に対する反射等などに大きな違いが見られます。場合によっては長所が短所となり得ることもございます。

いかに効率良く審美性を獲得するかを考えた時に材料の選択は歯科医師と歯科技工士によりディスカッションされるものであり、セラミック治療に関してのマテリアルの選択は患者さんが選択するものでは無く、歯科医師側がこれがベストだと考える治療を行うべきだと当院では考えております。

②被せた後に歯茎の炎症が起こらず歯周病が進行しない被せ物に関して

被せ物の形が悪いといくら精度が良い被せ物でも炎症を引き起こしてしまう事がわかっています。
このような被せ物が入ると歯磨きをしっかりと行っても炎症が継続してしまう可能が高く、最終的に歯周病が進行してしまい骨が溶けてしまいます。見た目に優れた被せ物をしても歯周病が進行してしまうのは本末転倒です。

被せ物のサブジンジバルカントゥアと呼ばれる、

歯肉縁下におけるオーバーカントゥアとアンダーカントゥア

前歯などの審美性が求められる部位では、被せ物をするために歯を削って形を作る際、歯茎のラインよりやや深く形作り事により、歯と被せ物の境目が歯茎の下(歯肉縁下)に来る事になります。この際被せ物の立ち上げの部分が歯茎を適切なプレッシャーでサポートする事で、口腔清掃を妨げないようなバランスの取れた状態を可能とします。周りの歯茎が許容する適切なサポート具合は個々の条件によって異なります。この被せ物が歯茎をサポートする立ち上がりの部分を

このサポートが強すぎてしまうと(オーバーカントゥア)、歯肉に対して明らかな機械的なプレッシャーがかかり、初期症状として貧血を帯び、後に歯茎に炎症を起こします。

逆にサポートが弱すぎてしまうと(アンダーカントゥア)、歯肉の異変(炎症・ロール状・スポンジ状・発赤・出血等が起こってしまいます。

被せ物のこの部位の形態を専門用語でサブジンジバルカントゥアと呼びます。

セラミックの被せ物の形を見てみましょう。

黄色い線がサブジンジバルカントゥアと呼ばれる部分で歯茎の中に入り歯茎を支える部分となります。この支える圧力が適切でないと歯磨きをしっかり行っても歯茎に炎症が起きやすくなってしまいます。

赤い線の角度も重要です。これが歯茎に対して豊隆しすぎていてもやはり歯茎にトラブルを起こしてしまう原因となってしまいます。

歯肉縁上におけるオーバーカントゥアとアンダーカントゥア

歯茎のラインから、歯冠の下3分の1までの形も被せものをした後の歯茎の状態に大きく影響します。

ここが膨らみすぎたり(オーバーカントゥア)、厚さが足りなかったり(アンダーカントゥア)すると、歯肉から歯冠の移行がスムーズではなく、プラークが停滞しやすい環境となり、歯茎の健康を阻害しやい状態となります。(上の図で言うと赤い線の角度)

また、審美的な側面から見ても、歯肉との連続的な移行形態が得られず、視覚的にも不自然になります。

③数年経過後も簡単に歯茎が下がらない事に関して

①と②の被せ物の形態的な問題が存在すると時間経過と共に歯茎は退縮してしまいます。すると、被せ物と歯の境目が露出し審美障害が起こります。

少し古い論文ではありますが、Valderhaug Jらは、歯肉縁下に設置した被せ物の境目が1年後に40%、10年後には70%も歯肉の退縮が起こっていると述べています。

また、Loiらは、形作りを歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)下で行い、被せ物の境目の精度を正確にしたにも関わらず、歯茎の退縮が起こる事があると述べています。

歯肉退縮の原因は先に述べた被せ物の形態や、被せ物の精度、接着剤の除去なと診断を行う必要がありますが、これらの要素が正確に行われていても歯肉退縮が起こる可能性があります。

上皮性付着内マージン

それに対し、近年歯茎の退縮が起こりにくくするために、上皮性付着内マージンと呼ばれる考え方が歯肉退縮を防ぐ方法の一つとして用いられるようになり、当院でもこの手法を取り入れ歯茎の退縮を最小限に抑える治療を行っております。

よりマニアックな被せ物を長期に渡って成功させるポイント


①歯槽骨形態

上顎前突(骨格的に上顎が大きい)・・・前歯を内側に抑えるように被せ物をする必要があるり、治療後に歯肉退縮のリスクが高くなります。また、歯ぎしりの影響を受けやすく、セラミックが割れるリスクにも注意が必要。矯正治療を併用した方が良いケースも多いと考えられています。

下顎前突(骨格的に下の顎が大きい)・・・前歯の被せ物で審美的な仕上がりを求めるのは困難です。殆どのケースで矯正治療を併用する必要がります。

②歯の萌出している位置

歯を支える歯槽骨に対し、歯の萌出している位置は歯肉のラインに大きく影響します。特に歯の萌出位置がボーンハウジングと呼ばれる歯槽骨の中心から逸脱し端の方に萌出していう場合、歯茎のラインは下がってしまいます。

このように歯列不正があると歯茎が下がり歯根が露出しやすいため、矯正治療が被せ物をする前に行った方が良いケースは多い

③歯軸方向

歯の傾斜が周りの歯と異なっていると歯茎のラインは不揃いになってしまう。被せ物によって歯の頭の部分の角度を変更する事はリスクを伴うのでリスクの見極めが非常に重要となります。

歯軸方向を矯正にて改善する必要があるケースは潜在的に多く、その際の重要なポイントは

・静態に適正な歯槽骨形態・歯軸形態によって嚙み合わせの力に対し適切に維持抵抗する事

・歯根の形から歯の頭の部分へと連続性を維持するように被せ物を装着する事。(歯軸を頭の部分で無理に変更するとこれが達成できない)

となります。

④歯冠・歯根形態

審美治療において、歯の頭の部分の形態や、根の形態に左右差がある場合は難易度が上がってしまいます。例えば、歯根の幅径が違っている場合、被せ物を大きくする事で左右差を整える事になりますがが、長期に炎症を起こさずに安定した被せ物の設計を保ちつつも被せ物の形態をコントロールするにも限界は存在します。

⑤歯茎のタイプ(フェノタイプ)

歯茎の性質は歯茎と被せ物の境目のラインの設定や長期経過後の予後に大きく影響を与えます。歯茎や支えている骨の厚さが薄い場合(Thin-scallop-type)、歯茎のラインの湾曲が急カーブ状になりやすく、歯茎の退縮が起きやすい。
そのため被せ物の治療の前に外科的・非外科的に薄い歯肉を改善する場合もあります。

ただし、歯茎が厚くなりすぎると、深い歯周ポケットを形成してしまう場合があるため注意が必要です。

歯茎の状態を改善できない場合は被せ物と歯の境目を普段より浅い位置に設定し、歯肉への負担を減らすように被せ物の下部3分の1の範囲(エマージェンスプロファイル)の膨らみ具合を抑える(レスカントゥアにする)配慮が必要なケースもございます。

歯茎や歯を支える骨の形状が厚い場合(Thick-fkat-type)は歯茎のラインが平坦になりやすく、前述したように歯周炎や歯周組織に加わる侵襲に対して歯肉は深いポケットを形成する傾向がある。また、歯の頭の形態が短くなる傾向があるため、審美的に仕上げるためには被せ物と歯の境目のラインを歯周ポケット内の深い位置に設定し、被せ物の下部3分の1の範囲(エマージェンスプロファイル)の膨らみ具合を少し大きくする(オーバーカントゥアにする)場合が多いです。

⑥被せ物の形態

詳しくは、「歯肉縁下におけるオーバーカントゥアとアンダーカントゥア」と「歯肉縁上におけるオーバーカントゥアとアンダーカントゥア」の項に前述しているが、適切な被せ物の形態を与えなければ長期間安定する被せ物にはなりません。
また、歯茎のラインは歯周組織に適合できる範囲内であれば、被せ物の形態調整によってある程度変更する事が可能です。

⑦歯茎のラインの調整
上記に記したように、被せ物の形態によりある程度の歯茎のラインを調整する事が可能です。

しかし、歯肉退縮などにより大きく隣の歯や反対の歯との調和が崩れているケースではそれだけで改善する事ができないケースがございます。

そのような時に、天然歯では適応症であれば根面被覆を用いて歯肉のラインを改善する事が可能です。
しかし既に被せ物が装着されている歯の場合、根面被覆を行う際に歯周形成外科が難しくなる事がございます。

⑧型取り(印象)

現在はデジタル化が進み、光学印象と呼ばれる光によるスキャン方式の印象(型取り)が発達してきています。しかし、光によるスキャンによる印象は歯茎縁下(歯周ポケット内)の印象を行う事ができないため、前歯などの審美修復を行う際に被せ物と歯の境目のラインを歯肉ギリギリに設定する必要がございます。

歯茎ギリギリに設定された歯茎がほんの少しでも時間経過と共に退縮してしまうとお口の中で完全に露出してしまい、被せ物と根の色調の違いにより審美障害を引き起こす事があります。

光学印象は患者さんにとっても負担が少なく、今後も発達していく事は間違いありませんが(当院も導入しておりますが)、現状は奥歯などの歯と歯肉の境目まで見えない部位にしか使用できません。

審美面に配慮して歯周ポケット内にマージン(被せ物と歯の境目)を設定し、前述したサブジンジバルカントゥアでしっかりと歯肉を支える事で健康な歯茎を維持しようとした場合、デジタル印象で型取りを行う事は非常に困難です。

昔からの丁寧なアナログな型取りをシリコンと呼ばれる材料を使用して行うことで歯周ポケット内の型取りが可能となります。また歯周ポケット内まで型取りするためには圧排糸とよばれる糸を歯周ポケットに挿入することで歯茎を押し広げる作業が必要となり技術的には非常に高いレベルを求められます。

誰でも容易に行う事のできる歯肉ラインギリギリの形作り、型取りと比較し、歯周ポケット内に境目を置く形作り、型取りは非常に難易度が高い手技であり、当院ではこの部分の精度が長期に渡って美しい被せ物、虫歯や歯周病を惹起しない被せ物を装着するために非常に大切なものと考えております。

これは歯肉圧排と呼ばれ、歯と歯茎の間にある歯周ポケット内に圧排糸と呼ばれる糸(紫)を入れてある状態です。

この糸を歯周ポケット内に入れた状態で形作りをする事で歯茎を傷つけず、歯肉退縮を引きおこさないようにすると同時に、型取りする際に歯周ポケットを開いた状態で型取りする事を可能にします。写真は形作りが終わった後ですが、歯茎が傷ついていない事がわかります。

型取りをする直前に糸を外すと、歯周ポケットが開いた状態となります、そこに型取りのシリコンを流しこむと、歯周ポケット内の根の部分まで型取りする事が可能です。根の部分の型取りをしっかり行う事が根の部分から移行的な被せ物を技工士さんが製作する事を可能としています。

歯肉圧排と呼ばれるこの作業を丁寧に手作業で行う事で良い型取りができますが、非常に高いテクニックが要求される部分でもあり、セラミック治療=良い治療ではなく、セラミック治療=テクニックのある歯科医師が行えば良い治療と言われる理由はここにあると言っても過言ではありません。

このように歯肉圧排を行い(歯茎の中に黒っぽい糸が入れてあります)、歯茎を保護した状態で形作りを行い、歯周ポケット内に被せ物との移行部を設定する事により、下の写真のような歯茎から生えたような被せ物を可能とします(奥から2番目の歯)

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