痛くない親知らずの抜歯と移植
親知らずの抜歯は抜く先生の技術によって痛みの強さが変わります
親知らずの抜歯は痛いというイメージをお持ちの方が多いように感じます。
確かに下の親知らずの抜歯は抜歯後の痛みが避けられないケースがございます。しかし痛みにも程度があり、少しでも痛みが少なくなるようにしたいのであれば、親知らずを上手に抜ける歯科医師に侵襲を少なく抜いてもらう事が非常に大切です。親知らずの抜歯は処置時間が大切で、短ければ短いほど周囲の組織の侵襲が少なく済み、痛みが出る可能性が低くなります。
NSデンタルオフィスでは浜松医科大学の口腔外科専門医が非常勤で在席しており、口腔外科医による親知らずの抜歯を受ける事が可能です。
95%以上の親知らずは当院にて抜歯
他院で難しいと言われて断られるような親知らずの抜歯も基本的には当院にて行います。当院で抜歯できない親知らずは骨の中を通っている下歯槽神経と親知らずの根の部分が明らかに接しているケースです。通常のレントゲン撮影で神経を損傷する恐れのある親知らずはCT撮影を行い、神経と接しているケースは口腔外科へ紹介致します。
高度医療機関とはいえ、あくまで抜歯を行う施設が変わっただけであり、親知らずの抜歯の際の神経への影響は変わらないため、高度医療機関で抜くからと言ってリスクが無いわけではございません。リスクが表面化してしまった時の対応ができるというのが高度医療機関の強みとなります。
親知らずは何故突然痛むのか
①親知らずの周りで細菌が繁殖し炎症が強くなる
親知らずは歯茎が被さっていたり、親知らずと手前の歯の間の歯周ポケットが深くなってしまったりするケースが多く、歯磨きの際に歯ブラシの毛先が簡単に届かない事により汚れが残ってしまいます。これにより親知らず付近は細菌が繁殖しやすくなります。
多くの方が日頃から親知らず周りに自覚症状のない炎症を抱えており、このような自覚症状のない小さく継続した炎症を慢性炎症と呼びます。
通常の体調の時であれば、免疫力が細菌をコントロールし炎症を小さいままにしてくれますが、風邪の病み上がりや寝不足などにより免疫力が下がってしまうと、突然細菌達が強い炎症を引き起こし、歯茎が腫れて強い痛みを伴う急性炎症を引き起こします。このようなケースを炎症の急性化と呼びます。
急性化した歯茎は抗菌薬で慢性炎症に戻してからでないと抜歯を行えないため、歯科医院を受診してもすぐに抜歯は行いません。まずは強い炎症を抑えて慢性炎症に戻った段階で抜歯を行います。
②虫歯が神経まで到達してしまっている
親知らず付近は歯ブラシが普段から物理的に届かなくなってしまっているケースが多く、十分な歯磨きが困難な事が多いことから虫歯好発部位となります。
汚れの管理ができない事から大きな虫歯ができてしまい、虫歯が親知らずの中の神経まで到達し、神経を興奮させる事により痛みが出てしまいます。
このようなケースは親知らずをすぐに抜歯しないと痛みが治まらないため、受診した日に即抜歯を行う事が殆どです。
③親知らずが反対の顎の歯茎を噛んでしまう、頬を傷つけてしまっている
親知らずが変な方向に萌出してしまっている場合や、反対の噛み合う親知らずがなく、親知らずが飛び出してきたケース(提出)などが、歯茎や頬粘膜を傷つけてしまい、そこから化膿してしまう場合があります。
このようなケースは生え方によっては当日抜歯を行ったり、親知らずの頭の尖っている部分を丸めたりします。
親知らずを抜いたらどの程度痛むのか
上の親知らずに関して言えば抜歯は一瞬で終わってしまい、抜歯後の痛みも感じない事すらある位痛みがございません。ただし頭が萌出しきっておらず、切開が必要なケースは痛みが強く出る事もございます。仕事をするには支障はありませんが、長い時間しゃべり続ける仕事の場合は若干痛みが気になる事がございます。
抜歯後の痛みが強いのは下の親知らずを抜歯した時です。下の親知らずの抜歯後は痛み止めを飲みたいと感じる方が多い程度の痛みが出る事が多く、1週間程度は痛み止めを服用する事が殆どです。しかし、痛み止めさえ服用していればそれほど気にする事なく日常生活を過ごす事ができます。
極まれに、ドライソケットと呼ばれる血餅が取れてしまい骨が露出した所に細菌が感染するケースに限って、強い痛みが出る事がございます。ドライソケットとなった場合は2週間程度痛みが継続し、痛み止めを服用しても若干の鈍痛を感じるのが一般的です。
腫れに関しては、他人からみて腫れているとわかる程腫れる事は殆どありませんが、極まれに腫れてしまう方がいらっしゃいます。期間は抜歯後3日~5日程度です。万が一腫れても良いタイミングで抜歯をすることをお勧めしております。
親知らず抜歯後に考えられる偶発症
下歯槽神経圧迫・損傷によるしびれ
下の親知らずの根の先は下歯槽神経という神経に近接しています。場合によっては神経と親知らずの根の先が触れているケースがあり、親知らずの抜歯の際に親知らずが揺らされる事によりこの神経を圧迫してしまったり、傷つけてしまう事で、唇にしびれが残ってしまうケースがございます。下歯槽神経と根が近接しているケースはCT撮影を行う事で、事前に抜歯のリスクを確認した上で、NSデンタルオフィスにて抜歯を行うかどうかの判断を致します。
上顎洞と交通
上の親知らずの根が上顎洞と呼ばれる鼻の空洞に飛び出しているケースがございます。この親知らずを抜歯すると上顎洞に穴が開いてしまい、通常少しの穴であれば自然に封鎖しますが、大きく穴が開いてしまうと自然に封鎖せず、場合によっては鼻に炎症が起きてしまうケースがございます。穴が塞がらないケースは長期的な抗菌薬の投与を行い封鎖を待つか、歯茎を切って穴を封鎖する事で対処を行います。
抜歯後疼痛
抜歯後に痛みがかなり強くなるケースがございます。ドライソケットと呼ばれる状態の可能性が高く、かさぶたが上手く形成されなかったり流れてしまい骨に細菌感染が起きた状態となります。この場合、基本的には抗生剤を服用しながら時間が経過し炎症が治まるのを待つしか手立てがなく、親知らずの抜歯後に痛みが強いと世間で言われる一番の理由となっております。
抜歯後出血
抜歯後一時的に出血が止まっても、再度血行が良くなる事で出血してしまい、中々出血が止まらないケースがございます。その場合再度来院して頂き、圧迫止血を試みますが、血液をサラサラにする薬を飲んでいたりする事で中々出血が止まらない場合、抜歯した穴にガーゼを押し込み縫い付けて止血します(タイオーバー)。タイオーバー後、1週間経過後にガーゼを摘出します。
親知らずはどういうケースで抜いた方が良いのか
抜いた方が良い場合
親知らずの付近の歯茎が腫れた事がある
親知らず付近がどうも痛む事がある
親知らずの生え方が中途半端で部分的に歯茎が被さってしまっている
親知らずが虫歯になってしまっている。もしくは治療を何度も行い、虫歯を繰り返している。
親知らずによって傷が出来て歯茎や頬粘膜に口内炎ができる
親知らずの頭付近に嚢胞と呼ばれるできものがレントゲン上で確認できる
親知らずがある事で清掃性が悪く、手前の歯の虫歯・歯周病を誘発している
抜かなくても良い場合
真っすぐに萌出しており、しっかりと噛み合い機能している場合
骨の中に完全に埋まっていて感染していない場合
移植のためのドナー歯として利用できる可能性がある場合
ブリッジの支えとして使用できる可能性がある場合
矯正治療の固定元として利用できる場合
親知らずの抜歯にかかる費用
横に生えて歯茎に大部分が埋まっている親知らずがおおよそ、レントゲンと合わせて5000円程度、親知らずの頭は萌出しているが骨を削ったり、根を半分に割ったりしなければ抜けない親知らずはレントゲンと合わせて3500円程度、簡単に抜ける親知らずはレントゲンと合わせて2500円程度と考えて下さい。
あくまで目安となりますので、実際に抜歯をしてみないと最終的な金額はわかりませんが参考にしてみて下さい。
歯科医院の治療前にできる応急処置
万が一親知らず周りの歯茎が痛くなってしまった時に、個人で行う事のできる応急処置を紹介致します。
①市販の痛み止めを服用する
市販の痛み止めは特にロキソニンなどは痛みの緩和に有効な手段となります。
しかしあくまで1次的なものであり、痛みの原因は細菌が繁殖した事による歯茎の炎症である可能性が高く、痛み止めでも痛みが改善しない場合は早急に受診するようにしましょう。
②うがい薬で消毒する
コンクール等のクロロヘキシジン含有のうがい薬を持っている場合は消毒効果が期待できるのでうがい薬でブクブクうがいをするようにしましょう。
③丁寧に歯ブラシをする
親知らず周りの汚れが原因で炎症が起こっているため、磨ける範囲で構わないので優しく歯茎から出血しても丁寧に歯磨きをするようにしましょう。
親知らずの移植とは
NSデンタルオフィスでは親知らずの移植を行う事が可能です。
大臼歯と呼ばれる奥の大きい歯に限定した話となりますが、歯を失ってしまった部位に対し親知らずの移植が可能な場合がございます。
移植が適応となる条件
- ドナーとなる親知らずを根を傷るける事なく良い状態で抜歯できる
- 移植する部位の骨に充分な高さと幅が存在し、神経だったり鼻の空洞(上顎洞)に到達せずに親知らずを埋める事ができる
- 親知らず移植後に根管治療が必要であるため、根が複雑な形態をしておらず根管治療が可能である
- 患者様が比較的若い患者様である事(40歳を過ぎると成功率がかなり下がります)
- できれば非喫煙者が望ましい
移植のデメリット
- 成功率は条件が整っている症例でも70%前後
- 適用できるケースが条件的にかなり限定されやすい
- 外科的侵襲が大きい
- 寿命は5年~10年である事が一般的
費用は状態にもよりますが、移植後根の治療を行い最終的な被せ物を被せるまでにおおよそ保険治療で2万5000円程度と考えられます。