浜松市のNSデンタルオフィスの近代における噛み合わせ治療
噛み合わせでお困りの方へ
・被せ物を沢山しており、どこで噛んだら良いかわからなくなってしまった
・食事の際に上手く噛む事ができなくなってしまった
・年齢と共に歯並びが悪くなってきた
・歯が削れて短くなってしまった、見た目に問題が出てきた
・被せ物をしてもすぐにダメになってしまう
・年々噛み合わせが崩れてきた気がする
・しゃべりづらく、発音に問題がある
このような方のために噛み合わせのお話をかなり詳しい所まで論文を読み解きながら解説致しました
前歯の歯並びが年々悪くなっている方(この写真は前歯が空いて来ている)
エビデンスベースドな噛み合わせに関する話
日本では噛み合わせに関する様々な考え方が存在しますが、エビデンスベースドで正しい噛み合わせの解説をしていこうと思います。少し難しい話となりますが噛み合わせにお困りの方に可能な限りわかりやすく解説させて頂こうと思います。
患者さんが理解するべき中心位と咬頭嵌合位
噛み合わせの話をする際に理解すべき中心位と中心咬合位、咬頭嵌合位
まずは中心位を理解しましょう。下の顎は前方に動いたり、左右に歯ぎしりの動きをしたりと自由に動きます。この際、後ろに少しだけ引く(バック)ができるかどうかですが、普段の噛み合わせの位置から更に後方に下の顎を引く運動を意図的でないにしろ行う事ができる方が一定数います。もともと一番後ろまでバックした位置で噛み合わせが落ち着いている方もいらっしゃいます。この下の顎が最もバックして後退した位置にある際の下顎の関節と上顎の位置関係の事を中心位と呼ばれます。とにかく下の顎が一番バックしている位置だと覚えてください。
下の顎を最後方に引いた位置での噛み合わせはトラブルが少ないため、噛み合わせで何かトラブルのある方の治療をする際にこの位置で噛み合わせを構築すると良好な結果を得られる事が世界的には共通認識となっております。ただし、中心位における噛み合わせでなくても問題を特に抱えていない場合はその限りではなく、その場合は何か被せ物の治療が必要になっても今の噛み合わせに合わせて噛み合わせを決めるためどちらが優れた位置というよりかは、何らかの問題を解決するため、噛み合わせの再構築が必要な方は中心位での噛み合わ治療を行う事でトラブルが起きにくいという事なので、必ずしも中心位でない=噛み合わせをその位置で構築しなければならないとはなりません。あくまで噛み合わせの再構築をする場合の基準として、良好な結果を得る事ができる位置という認識を持ってください。
日本では何故か噛み合わせは宗教的な側面があるという考えが広まっており、有名な先生が考える私の考える理想の噛み合わせのお気持ちを表明して講演会などを開いています。それを信じる方たちがそのやり方で噛み合わせの再構築が必要な症例を治療しています。これはうまくいかない事も多いのですが、特に問題なく成功してしまう場合もあります。どの流派も正解にもなり得るし不正解にもなり得るので噛み合わせは日本では宗教などと呼ばれています。
しかし、噛み合わせに関して、海外では明確に下顎の最後方位(中心位)で噛み合わせを設定すれば得にトラブルなく殆どのケースで上手く行きますよと論文ベースで公表しており、宗教ではなく誰もが成功の再現性を持って治療を行っています。
(ちなみに余談ですが下顎の最後方退位である中心位にある時、顎が後ろに下がって顎はやや回転の運動をするので、下顎の関節は頭蓋骨に対して上前方に位置します。下の歯は後退位にありますが、顎の関節自体は上前方に位置します。)
中心位での噛み合わせの事を中心咬合位と呼びます。中心位というのは下顎の上顎に対する位置関係の事で、その位置関係にある時のかみ合わせが中心咬合位となります。それとは別に単純に上と下の歯が最も接触面積が大んだ時のかみ合わせを最大咬頭嵌合位と呼びます。ですので、我々はかみ合わせにトラブルを抱えており、噛み合わせを再構築する場合、中心咬合位と最大咬頭嵌合位を一致させる必要があるのです。
ここまでのまとめ
- 中心位・・・下の歯が最も後方に下がった際の上顎と下顎の関節部の位置関係
- 中心咬合位・・・中心位に顎の関節が位置する時の噛み合わせ
- 咬頭嵌合位・・・最も最大接触面積をもって噛むことができる噛み合わせ
- 中心咬合位と咬頭嵌合位は一致していると様々な問題が生じにくい
- 本来、中心咬合位と咬頭嵌合位は多くの人は一致していない。それでも問題となる事は少ないが、問題を既に抱えている人や噛み合わせを再構築する必要がある人は中心咬合位=咬頭嵌合位とするのが最もトラブルが少ない
噛み合わせに既に何らかのトラブルがある場合はかみ合わせをトラブルのない状態で作り直さなければなりません。奥歯がないためインプラント治療をしたいが、奥歯がない期間が長く、前歯に力がかかり過ぎて既に噛み合わせが崩れて前歯が出っ歯になってきたり、過去にした被せ物によって作られた噛み合わせがしっくりこなかったり、うまく食事ができなかったりという時に中心位で噛み合わせを作ります。
しかし今のかみ合わせに特にトラブルがないケースなどは生体に適応しているため、無理に今の嚙み合わせを変える必要はありません。あくまで、今の噛み合わせによってトラブルが発生している、もしくは予測されるケースに限ります。
中心位で噛み合わせを作るのが最も理想的である根拠
次は、中心位で噛み合わせを再構築する必要がある根拠となる論文をいくつか記していきます。
Mathew T Kattadiyil, Abdulaziz A Alzaid, Stephen D Campbell.
The Relationship Between Centric Occlusion and The Maximal Intercuspal
Position and Their Use as Treatment Positions for Complete Mouth
Rehabilitation: Best Evidence Consensus Statement.
J Prosthodont. 2021 Apr;30(S1):26-33.
こちらはアメリカの補綴学会(被せ物や噛み合わせに関する学会)誌に掲載された最新の2021年の噛み合わせ治療を行う際の顎の位置に関する論文となります。論文の題目にあるようにベストエビデンスコンセンサスステイトとなっており、アメリカの補綴学会は皆この考えの元治療を行っていますと表明している論文となります。
以下その中の論文の抜粋です。
臨床的疑問① 有⻭顎者において 中心咬合位と 咬頭嵌合位 はどれくらいの割合で⼀致するか。
A、ほとんどの有⻭顎者(部分⽋損患者含む)において中心咬合位と 咬頭嵌合位 は⼀致しない。
過去の研究によると、中⼼咬合位と咬頭嵌合位にズレがある確率は、引⽤する⽂献にも
よるが、56%〜100%とされている。
臨床的疑問2:噛み合わせを再構築する患者さんにおいて、中⼼咬合位と咬頭嵌合位は⼀致させるべきなのか。
A、全顎補綴治療を⾏う際は中⼼咬合位と咬頭嵌合位を⼀致させることが好ましい。
中⼼位は全顎補綴治療(お口全体的な被せ物)を⾏う上で信頼性があり、かつ再現性のある下顎位であり、また、中⼼位における補綴(被せ物)を⾏うことによって、偏⼼運動時(歯ぎしりのような動き)の有害な咬合接触を減少させることが可能となる。また、偏⼼運動時の⾮作業側の咬合⼲渉・中⼼咬合位と咬頭嵌合位の⼤きなズレと顎関節症状に相関が認められたというような報告があり、その観点か
らも中⼼咬合位と咬頭嵌合位を⼀致させることが望ましいと考えられる。
(↑歯ぎしりのような運動時に過大な力が奥歯にかかるのを防ぐことができるという事です)
この論文の結論
多くの有⻭顎者において、中⼼咬合位と咬頭嵌合位は⼀致しないが、全顎補綴治療にお
いては中⼼咬合位と咬頭嵌合位を⼀致させることが好ましいと考えられる。
次にアメリカの歯科界の重鎮、McHorrisの論文を見て行きましょう。中心位で噛み合わせを作るべきなのはご理解頂いたと思いますが、ではその中心位に顎の位置を私達歯科医師が誘導するためにはどのような条件が必要かを述べた論文となります。
McHorris WH (1986): Centric Relation: Defined. J Gnathology 5(1): 5-21.
McHorrisは中心位(下顎の最後方退位)へ誘導するためには3つの阻害因⼦を取り除かなくてはならない。と述べております。
①外側翼突筋の弛緩
外側翼突筋の下腹は下顎の関節の部分に付着しています。この筋は緊張すると顎を前方に牽引してしまいます。この緊張は歯ぎしりであったり、今現在のかみ合わせによって決定される筋記憶の結果によるものです。この筋肉を完全にリラックスした状態にしなければ中心位に誘導する事ができません。
②上下関節腔内の過剰な関節液の存在
過剰な関節液は顎の関節が中心位に移動することを阻害してしまいます。この現象は顎関節症患者や、歯ぎしりをする方によく見られます。
③咬頭嵌合位と中心位の不一致
咬頭嵌合位と中心位が一致していない場合、顎の位置は最後方退位から噛み合わせによって前方に移動してしまいます。多くの方が中心位は咬頭嵌合位とは一致しませんが、かみ合わせを再構築する際の目標とされる顎の位置は中心位であり、最も優れた治療的顎位とされております。
中心位での噛み合せを記録する場合、歯と歯が接触していない状態で記録する必要がある。
この論文の結論
中心位で噛み合わせを構築すれば後方に顎が下がる事がないため、前方、側方運動の上下の歯の干渉が理想的でさえあればトラブルを抱える事が無く、かみ合わせが設定された位置よりも下顎が後方に下がり、奥歯が強く干渉してしまい様々なトラブルを引き起こす可能性を低くする事ができます。
中心位にどのように下顎を誘導するかは①②③の条件を満たす必要があります。②に関しては顎関節症の治療が必要となります。①③に関してはどのように条件を満たすか少し解説させて頂きます。
前述のとおり、①外側翼突筋の弛緩を行わなければ中心位を採得する事はできません。外側翼突筋の緊張を解除する方法は複数ありますが(デプログラミングと言う)、現在海外で最も多く使われるやり方はリーフゲージと呼ばれる下の画像にあるような道具を使用したやり方となります。これは前歯でリーフゲージを噛む事になるので、必然的に奥歯の干渉が無くなり③の条件も満たします。
リーフゲージ これを少ない枚数から前歯で噛むことにより外側翼突筋は次第に弛緩していく
リーフゲージによる中心位での咬合採得と半調節性咬合器への装着
リーフゲージとYou Tubeで検索して頂ければどのような手順で外側翼突筋の緊張を解除するのか動画を上げている先生達もいらっしゃるため、興味があれば検索してみてください。
リーフゲージを使用しデプログラミングを行い顎を最後方退位に誘導し、そこで下顎の位置と上顎の位置を記録します、さらにフェイスボウと呼ばれる器具を使用して、顎の関節の位置と上の顎の位置関係の記録を行う事で、咬合器と呼ばれるお口と顎の運動を再現する事ができる器具に上顎の模型と下顎の模型を取り付け、さらに上顎と顎の関節の位置関係が実際の患者さんの位置関係とほぼ同じようになるように取り付けて行きます。
フェイスボウ・・顎関節と上の前歯の位置関係を咬合器上に再現するために使用される
咬合器
これにより、咬合器上で顎を中心位に位置させて時の噛み合わせを診断する事が可能となります。これを分析し、被せ物やインプラント治療、入れ歯を製作する事で今現在噛み合わせが原因で起こっている問題が解決できるかどうかの診断を行っていきます。
これらの理由により世界的には嚙み合わせの再構成(フルマウスリコンストラクション)を行う場合は中心位にて行うべきだとコンセンサスがありますが、何故か日本では独自の咬合論が発達しており、嚙み合わせは宗教だというような先生達が多数派となってしまっております。
しかし、しっかりとエビデンスベースで噛み合わせをどう構築すべきか理解していくと宗教的なものではない事がわかります。
エビデンスベースドな噛み合わせに対する結論 =中心位で咬合を再構成となります。
咬合高径の決定
噛み合わせの水平的な位置が中心位で決定した後、次に行う事は噛み合わせの高さの決定です。これは咬合高径の決定と呼ばれます。
噛み合わせの高さは鼻の下から顎の先までの長さを決定するため、低すぎると老けて見えてしまったり、口角に炎症が起き荒れやすくなります。
高すぎると発音に影響を及ぼしたり上手く噛む事ができなかったりするため噛み合わせ治療を行う場合は患者さんが許容できるある一定範囲内に設定する必要があります。
Pokorny PH, Wiens JP, Litvak H. Occlusion for fixed prosthodontics: A historical perspective of the
gnathological influence. J Prosthet Dent. 2008. 99:299-313.
にて咬合高径は発音や顔貌との調和や安静時の前歯の空隙、歯の審美的プロファイリングにて評価されると述べられております。(咬合高径に関する論文は多種ありますが、有名な論文を選択しました)
このように、一つの要素で咬合高径は決定すべきではなく、様々な要素からクロスチェックを行い、咬合高径は決定されます。(この中で安静時の前歯の空隙に関しては参考にすべきか意見がわかれる所となっています)
NSデンタルオフィスの噛み合わせに関する診断
噛み合わせの再構築をが必要な場合、以上に述べた事を行って正常な噛み合わせを構築します。
当院ではこれらの噛み合わせの診断を含む虫歯、歯周病、審美歯科的問題、咀嚼障害等の自費の口腔内診断を行っております。
およそ1時間30分程度で徹底的に問題点の審査診断を行い、後日結果を資料にまとめてご説明させて頂き、どのような治療が必要かご説明させて頂きます。
お口の精密検診は以下の事を行います。
歯列模型の型取り
通常の噛み合わせ用審査の模型と中心位誘導した噛み合わせを半調節性咬合器と呼ばれる噛み合わせを再現する咬合器への装着用模型の2ペアを採得させて頂きます。
レントゲン撮影
パノラマ写真とデンタルと呼ばれる撮影範囲は狭いがより正確なレントゲンを10枚、CT撮影を行います。
CAMBRAに基づくう蝕(虫歯)リスク評価
現在アメリカにて最も良く使われているう蝕リスク評価システムとなります。2019年に最新版にアップロードされておりますが、日本では旧版のシステムがいまだに普及しています。
やらなくても良い無駄な検査がアップロードにより排除され、各種評価項目の若干のアップデートがなされています。
歯周ポケット、アタッチメントロスの測定
歯周病に関する検査を行います。日本では歯周ポケット測定が診断の基準となっておりますが、国際的にはアタッチメントロスと呼ばれる歯茎の退縮まで含めた値で歯周病のリスク評価を行っております。
2017年に世界共通の歯周病の分類が新たに発表され、現在はそれが歯周病の治療を行った際の効果の良し悪しの予測にも使用されていますので当院もその分類による評価を採用しております。
口腔内写真撮影
写真を撮影する事で現在のお口の問題を見つける事ができたり、時系列による口腔内の変化を可能な限り写真で評価していきます。
お顔の写真撮影
顔面正中であったり、審美的な前歯の先端の位置、スマイル時の前歯が作る審美性、歯の傾き、歯茎の露出等から審美的、機能的問題を評価します。
上の歯列の位置確認(フェイスボウ採得)
フェイスボウと呼ばれる器具を用いて顎の関節と上の歯の立体的位置関係を記録してそれを診断に使う咬合器にも付与する事で顎の回転中心が患者さんと近似した位置で噛み合わせの評価を行えるようにします。
中心位での噛み合わせ採取
前述した通り、下の前歯基準で最後方位、顎の関節基準で前上方位にあるときの噛み合わせをリーフゲージを用いて採得します。
咀嚼筋痛の審査
顎関節に関連する筋肉の触診を行います
食生活調査
実はかなり日本人でも多くみかける酸蝕症の原因や、う蝕(虫歯)リスク、歯周病リスクの評価に使用します。
費用について
初回はお口の中の状態を確認し、治療にて改善する可能性があるか相談させて頂きます。
必要な方は、2回目の来院時に咬合精密審査をさせて頂きます。
初回相談(30分程度)
お口の中を診察させて頂き、問題点をお聞きし精密検査を行うべきか相談させて頂きます
11000円(税込み)
2回目(必要な方)
中心位と咬頭嵌合位がズレており技工士による中心位での咬合器装着が必要な場合
88000円(税込)
中心位と咬頭嵌合位にズレがない場合(咬合器装着が必要でない場合)
66000円(税込)
3回目
検査の結果を説明させて頂きます。治療の費用等のご相談をさせて頂きます。
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