スタディーグループ新規発足。参加者募集。

近年、大規模スタディーグループは参加するために資金面で非常にハードルが高く、ローカルなスタディーグループに関しては多くが50歳付近の先生方で 構成されており、若手の先生が日々の臨床を統計だって学ぶ機会が非常に少ないように感じておりました。

私自身もその一人で、そのような仲間同士で切磋琢磨する場を求めておりましたが中々見つからないため、いっその事自分でそのような場を作ろうと考えるようになり今回の会を立ち上げました。

フルマウス治療をエビデンスベースで行う事ができるように

最初のシーズンでは私が過去に参加した勉強会で取り扱いのあった論文の中で有名なものを読み解いていきます。その後にインプラントについて重点的に学んで行く予定ですが、これらの論文を読み終える頃にはエビデンスベースでフルマウスリコンストラクションを行えるようになるように構成されているため、まずはそちらから共に学んで行きましょう。その後各論の一つであるインプラント治療に関して学んで行きます。

まずは厳選されたトータル60本程度の論文を読んで行きましょう。私が過去に学んだ厳選された論文で、これらを理解する事によりフルマウスの治療をエビデンスベースで行う事ができます。

昨年当院を受診された患者さんです。このような方をどのように治療していくかを考えていきます。

私の現在治療中のケースを考える事でどのような事を勉強していくか体験しましょう

この方は全額的に重度歯周病が進行しており、上顎は殆どの歯が保存不可能と判断しました。下顎は上顎終了後に治療を開始するため上顎に関して考察していきます。

まず、選択肢として上顎は総義歯、IOD、ボーンアンカードブリッジのお話をさせて頂き、患者さんがインプラントによるボーンアンカードブリッジを選択されました。

どのような顎位で咬合再構成すべきか

まず最初にフルマウスの治療を行うにあたって、どの顎位で治療を行うべきかに関してですが、2021年のアメリカ補綴学会誌にてベストエビデンスコンセンサスステイトメントとされた論文が存在します。

つまりアメリカの補綴学会がフルマウス治療を行う場合の顎位に関して声明を発しているわけですが、それが以下の論文です。興味のある方は絶対に読んでおく事をお勧めしますが、スタディーグループの序盤で取り扱う予定の論文でもあります。

Mathew T Kattadiyil, Abdulaziz A Alzaid, Stephen D Campbell.
The Relationship Between Centric Occlusion and The Maximal Intercuspal
Position and Their Use as Treatment Positions for Complete Mouth
Rehabilitation: Best Evidence Consensus Statement.
J Prosthodont. 2021 Apr;30(S1):26-33.

この論文にて、咬合再構成を行う場合は中心位と咬頭嵌合位を一致させて治療を行う事が好ましいと宣言されており、フルマウスリコンストラクションを行う場合は中心位での咬合再構成を行っていきます。

では、中心位での咬合採得に関して、どのような条件が必要となるのでしょうか。

McHorris WH (1986): Centric Relation: Defined. J Gnathology 5(1): 5-21.

1986年のマクホリスの論文です。中心位の定義に関しては多少変遷があるものの大きく変わっておらず1980年代より様々な論文がありますが最も有名なこの論文によると、

中心位(下顎の最後方退位)へ誘導するためには3つの阻害因⼦を取り除かなくてはならない。と述べております。

①外側翼突筋の弛緩

②上下関節腔内の過剰な関節液の存在

③咬頭嵌合位と中心位の不一致

つまり、外側翼突筋がリラックスしており、顎関節症状が無く、早期接触が無い状態で咬合採得が必要だと述べられています。

条件が整い、いざ中心位採得する方法にはいくつか種類があり、リーフゲージやルシアのジグなどのアンテリアでプログラマーを用いる方法やオトガイ誘導法、バイマニュアルマニュピレーションなどが知られています。アメリカだとコイスのデプログラマーなども有名かもしれません。

インサイザルエッジポジション、スマイルラインの設定

顎位が決まったら次はインサイザルエッジポジションを決めます。

Misch CE: Guidelines for maxillary incisal edge position-a pilot study:
the key is the canine. J Prosthodont. 2008 Feb;17(2):130-134.

このMischの論文にて、安静時の上顎中切歯の露出量が男女で違う事、年齢によって露出が少なくなっている事が記されました。これをもとに、安静時の中切歯の露出を見ながらインサイザルエッジポジションを決定します。

インサイザルエッジポジションが決定したら、次は審美的なスマイルラインを獲得するために側切歯、犬歯の形態を決めていきます。

Tjan AHL, Miller GD, and The JGP (1984): Some esthetic factors in a smile.

この論文でTjanはスマイルラインに関しての統計を記しており、最も一般的なラインを参考にスマイルラインを決定します。

また、細かい歯のプロポーションや位置に関して

William Robbinsの書いた書籍である、「Global Diagnosis」などを参考に前歯の審美を決定します。

ここでガミーの評価も行います。

ちなみに咬合平面の傾き(キャント)を決定する際に見る顔面正中に関してですが、私の場合は

Bruno Pereira Silva, Eduardo Mahn, Kyle Stanley, Christian Coachman. The facial
flow concept: An organic orofacial analysis-the vertical component. J Prosthet Dent.
2019 Feb;121(2):189-194. PMID: 30139676

こちらに記されているFFL(フェイシャルフローライン)を参考にしています。

咬合高径の決定

スマイルラインが決まったら次は咬合高径を決定していきます。咬合高径の決定には様々な方法がありますが、よくある安静空隙はその時付与した咬合高径に次第に適応していく事がわかっており、参考にはしますが決定的な要素とはなりません。

そのため私に関して言えば、安静空隙はさることながら、発音と顔貌との調和のクロスチェックにて決定します。参考にしている論文はスピアやターナーの論文を参考にしています。

Spear FM. Approaches to vertical dimension.
Adv Esthet Interdisciplinary Dent. 2006. 2(3):2-14.

Turner KA and Missirlian DM (1984): Restoration of the extremely worn dentition. J
Prosthet Dent 52:467-474.

ボーンアンカードブリッジのプロトコール

以上で、顎位、インサイザルエッジポジション、スマイルライン、咬合高径が決定していきます。

ここからはボーンアンカードブリッジを行う際に考慮するプロトコールです。

このケースはALL-on-4を行うための骨がないため、6本のインプラントを埋入したボーンアンカードブリッジの計画を立てました。しかし小臼歯から大臼歯にかけても骨が無いため、両側23部にインプラントを上顎7以外全抜歯とともに埋入し、骨植がまだまともな7を支台歯とした即時加重のプロビを装着しました。

画像はプロビ装着から4か月経過のCTです。ここから両側6にサイナスリフトを同時にインプラントを埋入し、インテグレーション後に両側7を抜歯していく予定となっています。

このようにボーンアンカードブリッジを治療する上でのプロトコールは様々なものがありますが、最も有名なプロトコールはポルトガルのカラメスの論文となります。

A comprehensive classification to full arch implant rehabilitation

こちらの論文は様々なケース別のボーンアンカードブリッジを行う上でのプロトコールを解説しており、マロと並んで2大巨頭のカラメスはN数も多く、非常に参考になります。

さらにボーンアンカードブリッジで最も心配な補綴のトラブルですが、これに関してはクリアランスによって選択できる補綴の種類が違うのでその辺りはラジオグラフィックガイド製作の過程で注意する必要があります。

また、許容できるカンチレバーも条件によって異なります。さらにポンティックの形態によって骨吸収量に有意差があったりと考慮する事は様々です。私は以下の論文を参考にしているため興味がある方は調べて頂ければと思います。

Framework Fracture of Zirconia Supported Full Arch Implant
Rehabilitation: A Retrospective Evaluation of Cantilever


Length and Distal Cross-Sectional Connection Area in 140
Patients Over an Up-To-7 Year Follow-Up Period

Implant prosthodontic design as a predisposing or precipitating
factor for peri-implant disease: A review

以上のような事を考え日々の臨床を行っておりますが、どうしても一人で全ての分野をアップデートしていく事に限界があります。

それを皆さんと一緒にアップデートして行きたいと考えております。


日時

日時 10月より毎月第3水曜日 の20時~22時 

場所 浜松駅周辺のレンタル会議室を使用予定 (自分のところの部屋を使っても良いという優しい先生がいらっしゃったら教えてください)

   (参加人数による)

会費 月5000円(会議室、論文購入料等に使用します。申し訳ございませんが参加できない月も会費は頂く形となります。)

少人数でのスタートを予定しております。集まる人数にもよるため、費用は暫定です。

最終的には各先生方の意見を吸い上げながら、症例発表や症例相談、経営に関する相談、外部講師招待など様々な取り組みを行っていきたいと考えております。

お申し込み

メールにてお申込みをお願い致します。

[email protected]

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