歯並びが年々悪くなる
歯周病患者に起こりやすい病的な歯の移動とは
病的な歯の移動(PTM:pathologic tooth migration)は、中程度から重度歯周病患者さんにおける一般的な合併症です。
人間は夜寝ている間、もしくは日中でも食いしばる事により歯はその力を受け止めています。歯周病患者さんにおいては歯を支える骨が減少しておりその力に対抗できなくなり、まず最初に下の奥歯が手前側へと移動を始めます。それにより、下の前歯が押されてしまい、下の前歯の歯並びが飛び出したり引っ込んだりという変化が起こり、同時に奥歯が傾斜した分、かみ合わせが全体的に深くなっていきます。(咬合高径の低下)
それにより、下の前歯が上の前歯に力を強くかけるようになってしまい、フレアアウトと言って以前より上の歯が出っ歯になって行くという一連の歯並びの変化を病的な歯の移動と呼びます。
歯周病の治療には矯正治療が必要とされるケースが多い
2005年に発表されたこちらの論文によると、歯周病患者の30.03~55.8%の範囲で罹患しているされております。
病的な歯の移動が起こってしまうと咬合崩壊が起こってしまう可能性は1段と高くなるため、本来であれば歯周病の治療に際し、矯正治療が必要とされるケースは潜在的にかなり存在していると考えられます。
矯正治療は時間も費用もかかるため、中々治療の提案をしても受け入れてもらえないのが現状です。
しかし本当にしっかりとした歯周病治療を行いたいのであれば矯正治療が必須なケースが多いため、その必要性をご理解頂くために今回ブログの記事とさせて頂きました。
当院では矯正治療を行っていないため信頼できる矯正医にご紹介させて頂き連携しながら治療を行って参ります。矯正治療は多くの歯科医院で行われておりますが、目まぐるしく進化する矯正治療に関しては認定医と呼ばれる資格を持った矯正に特化した先生に治療して頂く事が最も安心できる矯正医の選択方法だと考えられます。
認定医は厳しい条件をクリアした先生のみが取得できる制度ですので若い先生で認定医をお持ちの先生は最新の矯正に精通しているため当院としても非常にお勧めできますので、良い先生をお探しの方はご相談頂ければと思います。
矯正治療はちょっと・・と言う方
矯正治療は自費治療で費用がかかる上に病的歯の移動後の矯正治療は期間的にも長くなってしまう事が多く、矯正治療をお勧めさせて頂いても多くの方がそこまでして治療はできないと仰ります。
確かに治療を決意するには敷居が高いと思います。ですがあくまでも根本的な解決方法はしっかりとした歯周病治療を行った上で矯正治療を行うと言う事以外ないと言う事をご理解頂いた上での妥協案をご説明いたします。
歯周病治療をしっかりと行い、過剰な力に対し連結する歯は連結して抵抗力を増し、スプリントと呼ばれる夜の歯ぎしりや食いしばりを軽減するナイトガードを装着して頂く事が最低限の妥協案としてございます。
崩れてしまった歯並びが改善するわけではございませんが、進行を確実に遅くする、もしくは食い止める事が可能です。
ですから矯正治療まではちょっと行えない。とお考えの方も治療を受けて頂き、これ以上の悪化を極力防いでいただける可能性がありますのでやはり歯科治療をしっかりと受けて頂く必要がございます。
親知らずが原因で歯並びは悪くなるは嘘?
前の歯科医院で親知らずが歯を押すから歯並びが悪くなると言われて親知らずを抜いたが、その後も歯並びが悪くなり続けているという話を頻繁に患者さんからお聞きします。
私の父親も歯科医師で父に親知らずを抜いてもらったのですが、その際に父も同じように、親知らずがあると歯並びが悪くなるので抜いた方が良いといっていました。
実はこれ、かなり前から有名な論文で完全否定されているにも関わらず、いまだに親知らずが歯並びを悪くしていると言う先生が後を絶ちません。(親知らずを抜かなくていいというわけではなく、親知らずを抜いたから歯並びが悪くならないわけではないということです。)
この原因こそが実は病的な歯の移動(PTM)なのです。
しっかりとした根拠のある医療情報を提供できるように当院は努力して参ります。
根拠に基づいた歯科治療とは(EBMについて)
思い当たる方は是非ご相談下さい
浜松市東区の歯科医院NSデンタルオフィスでは病的な歯の移動に対する歯周病治療を行っております。このブログを読んで頂き、思い当たる点があれば1度ご相談して頂けたらと考えております。また、歯周病に関して詳しい知識をできるだけ持つ事が歯周病の治療や予防に非常に重要ですので以下のリンクより歯周病について情報を得て頂ければと思います。
歯科医師、医療法人社団ほほえみ理事長、NSデンタルオフィス院長。
1984年生まれ、静岡県富士市出身、静岡県立富士高校、国立東北大学歯学部を卒業後、東北大学歯学部付属病院第2総合診療室にて研修を行い、東北大学歯学部付属病院口腔診断科にて診療を行う。
2010年にNSデンタルオフィスを開業。2018年に医療法人社団ほほえみを立ち上げ、理事長に就任。
2021年には東北大学歯学部の39回生と40回生の信頼のできる歯科医師からなるスタディーグループTUGを立ち上げ代表に就任。
インプラント治療と精密根管治療に力を入れており、他院で断られた難易度の高いインプラント治療や、抜歯と診断された歯の治療を行い保存するような治療が得意。
歯科受診時の恐怖心を極力少なくできるように痛みが少なく、居心地の良い歯科医院を日々目指しています。